【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
……………
それからしばらくして、小学生に上がる頃、今度はあたしが引っ越すことになった。
大好きだったおばあちゃんが天国へ旅立ったため……。
もともとおばあちゃんの家だったこの家は、おばあちゃんが亡くなるのを見届けたあと、急に老朽化が進んでいった。
家も意志を持っているんじゃないかと思うほど急速に……まるで、おばあちゃんの後を追うように。
家もおばあちゃんが大好きだったんだ、きっと。
そのほかにも、お父さんの仕事の都合、あたしが小学生に上がること、いろんな節目がおもしろいように重なって。
まだ淡雪が残る3月3日のひな祭りの日、引っ越すことになった。
ヒロ君とは、出会ったあの日から引っ越しの日まで、1年くらいずっと仲良くしてもらっていた。
5月には、おばあちゃんと指きりげんまんをして約束していた鯉のぼり、作ってもらって大はしゃぎしてたっけ。
8月にはヒロ君の家族と花火もして、みんなで集まって写真も撮った。
……それが、おばあちゃんが最後に写った笑顔の写真だったっけ。