【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
あたしの夢。
それは、介護の道に進むこと。


おばあちゃんを介護していたお母さんを見てきたからか、それともお世話してもらうおばあちゃんの「ありがとう」と笑顔を見てきたからか。


理由なんていっぱいあって、どれが目指すキッカケになったか定かじゃないけど……。


これだけは自信を持って言える。


“たくさんの人の笑顔が見たい”


おじいちゃん、おばあちゃん、あたしのお母さんのように介護する家族……みんなの笑顔が見たいから。


だからあたしは介護士を目指して勉強して、思い出が詰まったこの町に恩返しがしたくて、戻ってきたんだ。


その彼氏はすごくいい人だったけど、おばあちゃんの生きた町で介護の仕事をしようとするあたしを快く送り出してはくれなかった。


彼は大学生で、あたしは専門学生だったからかな。うまく歯車が噛み合わなかった。


それだけが別れた理由ってわけじゃないけど、大きな理由としてはそれだった。


“わざわざハードな職種に就かなくてもほかにも仕事はあるのに”


そんな顔をされた。
 

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