【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
バタバタ、ドタドタ!
廊下の向こうから急いでこっちに走ってくるスリッパの人。
足音からすると、その新人さんはどうやら男の人っぽい。
「すみません!嬉しくて興奮しちゃって……寝坊しました!」
ぽかん。
ハァハァと息を切らしてスタッフルームに飛び込んだ新人さん。男の人だっていう推測は正解したけど……。
第一声があんまり変だったから、スタッフ全員ぽかんと口を開けてしまった。
「嬉しくて興奮しちゃってってなぁ……大崎君!ここは遠足じゃないんだぞ」
部長は呆れた大きなため息をついて苦笑い。ほかのスタッフもクスクス笑いだした。
もちろん、あたしも。
でも……すっとあたしの横に並んであいさつを始めようとする“大崎さん”に一瞬で目が奪われた。
「大崎陽路です!今日からこちらで働かせていただくことになりました!初日から遅れて申し訳ありません。今日の失敗は今日のうちに挽回します!よろしくお願いします!」
あたしのあいさつのときとは大違いで、しゃんと胸を張ってあいさつをした彼。