【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
バタバタ、ドタドタ!


廊下の向こうから急いでこっちに走ってくるスリッパの人。


足音からすると、その新人さんはどうやら男の人っぽい。


「すみません!嬉しくて興奮しちゃって……寝坊しました!」


ぽかん。


ハァハァと息を切らしてスタッフルームに飛び込んだ新人さん。男の人だっていう推測は正解したけど……。


第一声があんまり変だったから、スタッフ全員ぽかんと口を開けてしまった。


「嬉しくて興奮しちゃってってなぁ……大崎君!ここは遠足じゃないんだぞ」


部長は呆れた大きなため息をついて苦笑い。ほかのスタッフもクスクス笑いだした。


もちろん、あたしも。


でも……すっとあたしの横に並んであいさつを始めようとする“大崎さん”に一瞬で目が奪われた。


「大崎陽路です!今日からこちらで働かせていただくことになりました!初日から遅れて申し訳ありません。今日の失敗は今日のうちに挽回します!よろしくお願いします!」


あたしのあいさつのときとは大違いで、しゃんと胸を張ってあいさつをした彼。
 

< 24 / 42 >

この作品をシェア

pagetop