【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
「よ〜し、分かった!今日は無礼講だ!みんな、飲んで騒げ!」


佐藤さんの勢いに押され、部長は“かんぱ〜い!”と缶ビールを空に突き上げる。


「お〜!」


それを合図に、ほかのスタッフたちも缶ビールを空に突き上げる。


缶と缶がぶつかるときの心地いい音が春の日差しの中に響いた。


「ねぇねぇ、春野さんってさぁ」


一気に缶ビールを飲み干した佐藤さんがさっそくあたしに話しかけてくる。


「はい?」

「前から思ってたんだけど、大崎君の初恋の子の雰囲気にピッタリなのよねぇ」

「は、はぁ……」

「一生懸命で人一倍優しくて、それでいて、ちょっとドジなとこ?もうぴったんこ!」

「そうなんですか……」

「うんうん!前にね、大崎君になかなか浮いた話がないから聞いたのよ〜!そうしたら、そんなことを言ってたの」

「へぇ。知りませんでしたよ」


陽路君の初恋の子があたしに似てる、かぁ……。


佐藤さんのハイペースにビックリしながらも、そう聞いて、あたしの中にも初恋の淡い思い出がよみがえった。
 

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