【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
「ううん。おじさんもおばさんも全然変わってなくて安心した。自分の両親のこと、ちょっと思い出しちゃったよ」


陽路君の隣を歩きながら、あたしは笑ってそう言った。


「あぁ。そうだね。そっちのおじさんとおばさんは元気?」

「うん。超元気!お父さんなんてね、毎日電話してくるの!」

「え?あのおじさんが?」

「そうそう!“元気か?仕事はどうだ?風邪ひいてないか?”って、そればっかりだよ。あは……」

「そっか」

「うん……」


……なんでだろう。
涙が出ちゃいそう。


「家族っていいよな。俺はあの家から出たことないけど、本当にそう思う」

「……うん」


ダメだ……。今は“家族”って言葉を聞くだけでお父さんとお母さんの顔が浮かんできちゃう。


「親父やおふくろじゃないけど、なんかあったら俺を頼ってくれて全然いいから」

「……うん」

「なんたって、俺はヒーローの陽路だから!」

「ありがとう……」


もう限界。
優しい言葉に包まれて、あたしの目からはポロッと涙がこぼれた。
 

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