【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
「えっ?……まぁ、大事にしてるかな。サキちゃんとおばあちゃんがくれたものだし……」
突然の質問に戸惑いながらも、陽路君は“大事にしてる”と答えてくれた。
あんなに前にのもの、まだ持っていてくれることが嬉しい。忘れていたっておかしくない年月が経っているのに……。
「そっか。ふふっ」
「……サキちゃん?」
陽路君の気持ちがそうなら……。あたしの気持ちがそうなら……。
「お内裏様とお雛様、一緒じゃないとかわいそうだもんね」
不思議そうな顔をしている陽路君にあたしは笑いかけた。もう涙は出ない。
「……」
「あたしもだったの、初恋の子。ヒーローみたいに助けてくれた、陽路君だったの」
「……え?」
陽路君は目をパチクリさせてる。
「同じこと言うようで恥ずかしいんだけど……この町で再会して、初恋の人と職場が同じで。あたしもそれなりに“恋”はしたけど、初恋ヒーローに会ったら、やっぱりかなわないなぁって思って」
少しずつ気づきはじめてたんだ。陽路君に惹かれてるって……。