【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
初恋のヒーローが、今度は大勢のヒーローになってあたしの前に現れた。
陽路君の仕事ぶりを見てればよく分かる。本当に彼はヒーロー。
いつも“みんなのために”って働く姿は、あたしだけじゃなく、たくさんの人を笑顔にするんだ。
いつの間にか好きになっていた、なんていうのとは少し違うかもしれないけど……。
彼に再会して、ずっと眠っていた初恋の思い出が蓋を開けた。一緒にいるうちに、思い出だったものが現実になっていった。
“好きだった”っていう気持ちが“好き”に……現在進行形になったんだ。
「……じゃあ、サキちゃんも俺と同じ気持ちだって……こと?」
しばらく黙っていた陽路君が、やっと言葉を見つけて口を開いた。
「そうみたい……だね」
さっきはあんなにペラペラと口が動いたのに、今は恥ずかしくて口ごもってしまう。
あたしと陽路君の心臓の音……バクバクバクっていう音が聞こえる気がする。
お互い目も合わせられないくらい赤面しているのが、こんなに暗い中でもよく分かった。