【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
初恋のヒーローが、今度は大勢のヒーローになってあたしの前に現れた。


陽路君の仕事ぶりを見てればよく分かる。本当に彼はヒーロー。


いつも“みんなのために”って働く姿は、あたしだけじゃなく、たくさんの人を笑顔にするんだ。


いつの間にか好きになっていた、なんていうのとは少し違うかもしれないけど……。


彼に再会して、ずっと眠っていた初恋の思い出が蓋を開けた。一緒にいるうちに、思い出だったものが現実になっていった。


“好きだった”っていう気持ちが“好き”に……現在進行形になったんだ。





「……じゃあ、サキちゃんも俺と同じ気持ちだって……こと?」


しばらく黙っていた陽路君が、やっと言葉を見つけて口を開いた。


「そうみたい……だね」


さっきはあんなにペラペラと口が動いたのに、今は恥ずかしくて口ごもってしまう。


あたしと陽路君の心臓の音……バクバクバクっていう音が聞こえる気がする。


お互い目も合わせられないくらい赤面しているのが、こんなに暗い中でもよく分かった。
 

< 37 / 42 >

この作品をシェア

pagetop