【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
「うわっ!危ないだろ!」
「やめろって!」
男の子たちはヒーローが振り回す木の棒に同じように振り回されながら逃げ回る。
「うるさい!人の気持ちが分かんないヤツはどっか行け!もう来んな!」
ヒーローは、そう言いながらブンブン棒を振って追い掛け回している。
「もう二度と来るか!こんな家!!おぼえてろよ!」
いつも先頭に立ってひな人形をバカにしていた子が捨て台詞をはいて帰っていくと、ほかの子も何かブツブツ言いながら後に続いていった。
それを見て、満足そうに仁王立ちする半ズボンヒーロー。
「ふんっ!おととい来やがれってんだ。弱っちいくせに!」
そして、あたしのほうに顔だけ振り返ると、棒をひょいと肩にかけてニカッと笑った。
「……あ、ありがとう」
呆気にとられながら一部始終を見ていたあたしは、当然のようにそんな言葉しか出なくて。
「あ……でも、おとといも来てたよ。おしいね」
どこらへんが惜しいのかも、どうしてそんなことを言ったのかも、全く意味不明。