【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
無意識のレベルで出たのが、おとといも来てた、って、そんな話だった。


「そうなの?だったら、もう少し早く引っ越してればよかったね、僕。昨日、引っ越したばっかりなんだ」


そうなんだ。昨日なんだ。


そんなことを思っていると、半ズボンヒーローは得意気に鼻をすすりながらあたしに言った。


「あ、僕の名前、ヒロっていうんだ!“大崎陽路”!!ヒーローみたいじゃない?」

「ヒロ……うん!ヒーローだね!カッコいい」


あたし、本当にかっこいい名前だと思ったんだ。“ヒロ”だから“ヒーロー”って。


漢字なんて1つも知らなくて、そのあと、彼が地面に書いてくれた“陽路”って字もうまく読めなかったけど。


だけど、言葉の響きがいつまでも頭に残っていて、離れなくて……そして、ヒロという名前のヒーローに心を奪われてしまって。


淡い淡い、まるでひなあられのようにほんのり甘い感情が、あたしの胸をしめつけて。


初めて見た男の子に、初めての恋をした瞬間だった。あたしの初恋は、ヒーローの陽路だった……。
 

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