いじめ
愛美ちゃんがため息をついて
振り向いた。


「拒否権て…誰にでもあるし…
 何で私のことを蹴れ、って
 言うのかも分からないよ…。

 全部説明してよ…。」


愛美ちゃんは私の方向なんて
見ていない。
ただ、トイレの窓から
遠い目で空を見つめていた。


綾実ちゃんは綾実ちゃんで
自分の髪の毛を指に巻いて
カールなんてさせていた。


瑠夏ちゃんは壁に寄りかかりながら
黙って下を向いていた。
下にはトイレのタイルがあるだけなのに…。


刻々と時間が過ぎていく。


それが私には恐ろしく長い時間に
思え、時計に目をやる。


あと10分で…授業が始まる───


「教えてよ…!」


「何で美羽ちゃんのことを
 蹴れって命令するのか聞いてんの?」


愛美ちゃんが真顔で
ようやくこっちを向いた。
大きなガラス玉のような目には
感情何1つ映し出していない。


「…そうだけど…。」


何だかまた恐怖が蘇ってきて
私はおずおずと頷いた。


「簡単じゃん。
 美羽ちゃんのことが気に入らないからだよ。」


「なっ…?!」


口に手を当てて凄く凄く驚いた。
ただ、純粋に。
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