いじめ
「…美羽?
 …学校、どうしたの…?」


ちづるお姉ちゃんが
やや言い辛そうにそう言ったあと、
乾いた唇を舐めた。


室内は暖房なんて付けていなかったが、
充分乾燥していた。


私は声も出せず、
ただ俯くほかなかった。


「…」


沈黙が続く中、ちづるお姉ちゃんの
空咳が聞こえる。


「…あの、美羽…?」


少々戸惑った声のちづるお姉ちゃんの
顔を見ることが出来ず、
理由もなく謝ってしまった。


「ごめんなさいっ…!」


そしてちづるお姉ちゃんに
話したくない、という気持ちが高まり、
私はソファに置いてあった
通学カバンの2本の紐を掴み、
走って玄関へ向かった。


外は寒かった。
北風がびゅうびゅうと吹いていて
顔に満遍なく当たる。


耳はもう凍ってしまったのではないかと
私は思い、思わず耳を触ったくらいだ。


こんな時、近くに公園があれば。
公園のベンチでココアでも
飲めたら。
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