秘密にし・て・ね(前編)
言ってしまってからチラッと友成くんを見たが、別段驚く訳でもなくビールを一気に飲み干していた。
特に反応を示さない友成に対して佳奈はただ友成から発する言葉を待っていた。
長い沈黙の中、一通りおつまみを食べた後で友成くんが佳奈を見て言った。
「まっ、お前が誰と付き合おうと俺には関係ねえけど相手が相手だからそりゃ言えない訳だな。何でまたあんな国民的人気者と知り合いになったんだ?」
佳奈は夏樹との出会いから今までの事をざっと友成に話した。
「なんだよ、あいつ自分が芸能人ってこと忘れてんのか?アイドルがナンパなんて聞いたことねーし」
「私も、最初は驚いた。まさかこんなところに芸能人が?って」
「国崎主任も知ってるって、なんで?」
「前にね、夏樹のマンションで国崎主任にバッタリ会ったの。彼の婚約者が同じマンションに住んでいたみたいで・・・・・」
「ふ~ん、これでお前が今まで悩んでた理由がわかったよ。最近までずっとマスコミを騒がしていたスキャンダル、その張本人と付き合ってたんだもんな」
「・・・・・・・」
「で?二人の関係は俺の一言のおかげで修復したって?」
「うん・・・・・夏樹と楠木玲はもうなんとも無いの誤解が晴れたって言うかごちゃごちゃしてたことが丸く収まったっていうか。で、結局もとの状態に戻ったって感じで・・・・」
「そっか、俺ってとんだピエロじゃね?好きで仕方がねえ女の恋の応援しちまったのかよ」
「は~っ」と大きなため息が聞こえた。