秘密にし・て・ね(前編)
美味しい料理と愛しいアナタ
佳奈は今六本木にある夏樹のマンションの前にいた。
「来ちゃったけど大丈夫かな?」
そういって暫く考えたがここにいてフラフラしていたらよけい目立つと思い住人の振りして入れば大丈夫だわ!と思うことにして、中に入っていった。
中に入ると守衛さんらしき人がさりげなくこちらをチラッと見たが気にすることなく佳奈は部屋番号を押していた。
「えっと確か351だったよね」
確か夏樹の部屋は最上階の35階だった。本当は携帯で今行くと電話を掛けてからのほうがいいと思ってさっき電話をしてみたが通じなかった。仕方なく直接行くことにしたのだ。
暫くすると「ハイ」と夏樹の声がした。
「えっと花咲です花咲佳奈です」
なぜか佳奈はインターホン越しでも緊張してフルネームを言ってしまった。
「ちょっと待って今開けるから」
そう言って暫くすると正面のドアが静かに開閉した。
幸いエレベーターには誰もいなかったし、途中で乗ってくる人もいなかったので35階までノンストップで進んでいった。