人の死にまつわる話
通夜で斎場に父の遺体が運び出されるまでに3日ほどあった。
その間、父の体はドライアイスで覆われ、とても冷たくなった。

また、どうしても口を開けたまま亡くなったため、閉めるのに苦労した。
口を開けたままで旅立つのはあまりよろしくないらしい。
すっかりやせてこけてしまった父の頬には綿が詰められたが、それも見えてしまうようになって見てくれもよくない…というのもあるのかもしれない。
そのあたりは業者の方がやってくださったので、私たちは見ているだけだった。

もう魂が抜けてしまった父の体というものに畏怖の気持ちが出てきて、私はなかなかさわることができなかった。
一週間前の正月休みの時にはベッドの脇に座りながら私たちを見送ってくれた父がもう目を覚ますことがない、という事実に現実味がなかった。

3日の間に通夜に来られないから…と弔問に駆けつけてくれた父の古い友人の方が涙を流しているのをみて、父の交友関係に思いをはせながら、私たちも静かに涙を流していたように思う。
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