人の死にまつわる話
それからの父の衰弱は怖いくらいだった。

癌細胞というのは正常な細胞より繁殖力が強く、あっという間に体の中を埋め尽くしていく。
内臓を圧迫するので、ごはんが食べられなくなっていく。
父はみるみるうちにやせていき、実家へ何とか都合をつけて帰ってみると、そのたびにやせ細っている…という有様だった。
そばについて看護していた母も食べられないのでなかなか体力がつかない、と嘆いていた。

初冬には妹が看護休暇を取って、実家に帰ってくることになった。
妹には姪が二人、それも一人は今年生まれたばかりの子。
姪たちの世話をしながらの看護生活はさぞかし大変だろう…と案じたけれど、父母は娘がそばにいることの安心感と、孫の愛らしさに癒される日々だったようだ。

しばし平和な日々が続いた。
でも、そんな日々はあまりに短すぎた。
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