人の死にまつわる話
年末年始に一緒に過ごしたとき、父は信じられないほど穏やかで安定しているように見えた。
ただ、入院生活で足が萎えてしまい、歩くことが困難になってしまったのだ。
平坦なところは手すりがあれば何とか…という感じだったが、階段となると、後ろから押してでないと登れないという状態。
それでも、トイレのために階段を往復していた。
そのときは、父は頑として二階の部屋で過ごしたいといってきかなかったのだ。

二階の部屋はかつて私が結婚して家を出るまで使っていた日当たりのよい部屋だ。
ベッドのそばには花や緑の鉢植えを置き、オイルヒーターで穏やかに温められた室内で、孫たちが入れ替わり立ち替わり出入りしては父と戯れた。
私もできる限りそばにいて、話をするようにしていた。
一方で、日々衰弱していく父の容態に心がついて行かないらしい母の涙を話とともに共有した。



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