人の死にまつわる話
私たちは娘の塾の都合で2日には帰ることになっていた。
2日は私の祖父の命日で、本家に挨拶に行くことが通例になっている。
今年は母は父の付き添いで行けないので、私たち一家と妹家族のみで訪問をした。

本家の伯父は父より8歳くらい上だが、まだ何とか会社経営者としての日々を送っている。
伯父と伯母は今まで病気一つしたことがなかった父が倒れたことがショックだったようで、いろいろ話をしても顔が晴れることはなかった。

挨拶から帰った後、しばし私は父の部屋でとりとめのない話をしてすごした。
いよいよ帰ろうというとき、私はやせて小さくなった父の両肩に手を置いて、「苦しいけど頑張ってね」と言い置いた。
父は「今年は本当にいい正月だった」と言ってくれた。
私は父が病気になって初めて父の前で涙を流した。
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