REAL gray
とりあえず、恥ずかし過ぎる。
電車でふらついて優司に支えられるとか有り得ないし情けない。
その前に近い。
優司との距離が近ぇ!
「あっ、ありがと……」
吃ったー!
動揺している事がモロばれだ。
優司は笑いを堪えるのに必死っぽい。
ねぇ辻遥飛、落ち着こう?
「辻、着いた」
「ハイ!降ります!」
「これバスじゃないから安心して」
また笑われた。
でも、優司の楽しそうな顔を見てホッとした。
優司が笑ってくれるなら、私はコメディアンになったっていい。
どんな恥ずかしい事も、多少はやってみせる。
多少だけどね。
――優司の笑顔が好きだ。
私たちは映画館を目指し歩きだした。