REAL gray
映画館は駅から30分くらいかかる。
もうひとつ前の駅で降りれば20分くらいでつくらしいのだが、あいにく私たちは方向音痴なのだ。
でも、もし私がその道のりを知っていたとしても、私はこっちの駅で降りたと思う。
少しでも多く、優司との2人の時間を過ごしたい。
その30分間、入学したてのM高はどうだとか、そっちのクラスはどうだとか、新生活の話に花を咲かせた。
残念ながら、優司とはクラスが離れてしまった。
私は6組。優司は4組。
5組を挟んだだけ、と思うかもしれない。
しかし、M高の1学年の教室の配置は意地悪であった。
1〜5組は隣合っているのに、5組と6組の間には数学研究室とトイレがあり、教室2つ分の離れている。
この隔離された空間がとても切ない。
「これから話すこと減るんだろうな……」
「ん?なんか言った?」
「え!?何も!?」
私は慌てて手と首を横に振った。