REAL gray
映画が終わり、シアターを出た。



「部活入ろう……」



2人の感想はまずコレだった。


映画の中の野球部は壮絶だった。

壮絶ったら壮絶だった。







帰り道の話題は「恋愛感覚」になってしまった。




「結局デートっぽい事しなかったな」

「デートっぽい事?」

「初めてだしよくわかんないけど」

「私なんかが初めてもらっちゃってすみません」

「オレも辻の初めてもらうつもりだから」

「?」




――私がこの「初めて」の意味を知るのは、もう少し後のこと。




帰りはどこにも寄らず、駅まで来てしまった。

列車がくるまで後30分しかない。



――もう少し、一緒にいたいな。



そんな願いも虚しく、話してるうちに列車がやってきた。
楽しい時間は、本当にあっという間だ。


私たちは列車に乗り込み、右側のドアの近くに立った。


窓からの空は、まだ明るかった。
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