REAL gray
「ねぇ、優司くん」
まだ眠そうな声で優司は素っ気なく返事をした。
「私、映画が観たいの」
優司くんと一緒に。と付け足すつもりでいたけど、緊張のせいで声が震えたからやめた。
「また?」とか「行けば?」とか、軽くあしられてしまうだろうな。
「んー……、今度の土曜日は、部活休みだけど……」
「え?」
「行くんじゃないの?一緒に」
私はケー太くんをにぎりしめたまま、無言で固まった。
こんなに、幸せでいいんだろうか――。
「じゃぁ、今度の土曜日…」
ケー太くんをじっと見つめ、ひとり赤面した朝だった。