REAL gray
玄関を開ける。
「よっ」
「……よ。まあ、入りな」
「おじゃましまーす」
そう小声で言う夏仕様の優司は、少し日に焼けかっこよさを増していた。
冷静を装いながら、優司を部屋に促す。
部屋まであと一歩という階段の踊り場で、優司に髪を引っ張られた。
「?!……?!」
思わず優司を二度見する。
「髪……濡れてる?」
そういえば、片付けに必死で髪を乾かすのを忘れていた。
ただでさえ乾きにくい髪質だ。
「ああ、寝癖がひどかったからシャワー浴びた」
ふうん、と優司は髪を放し私より先に部屋に入って行った。
なんて態度のでかさだ。
勉強始めて15分弱。
私は手を止めた。
どうしよう、飽きた。
これがB型の性と言っては他のB型に失礼極まりないが、私は重度の飽き性だ。
今はそれを通り越して睡魔まで出てきた。
先ほどから何度となく欠伸をしている。
ちらっと優司を見ると、優司もこちらを見ていたらしく目が合った。
「なに?」
「手が止まったと思って」
「見えてましたか」
「ううん、見てた」
――なんか、そう言われると恥ずかしい。
「いつから?」
「欠伸ばっかしてた」
「ちょっと見ないでよ!」
「遅い〜」
意地悪に優司が笑う。
私は、無償に嬉しくて。
「もーいーよー。私寝るからわかんないとこあったら起こして」
私はシャーペンを置き、優司に背を向け布団の中へもぐった。
しばらく沈黙になる。
わかった、とか返事は?
様子を探ろうと耳をすます。
「そんなにやってほしい?」
「……まー、うん」
少し馬鹿のが好きだけど、馬鹿すぎるのは嫌だ。
「いいんだ」
優司が部屋に入る時のように、ふうんと笑った気がした。