REAL gray
「痛ッ」
その温かいモノに頬を抓られた。私はそれを掴み、後ろを見た。
シートの後ろから、優司くんがちょっかい出してきたのだ。
「ちょっ、天道!」
「なんで名字?」
「雰囲気だよ!」
本当の事を言うと
一瞬だけ、幽霊かと思って驚いてしまったのだ。
「怖い?」
「全然」
とか言っときながら、掴んだ優司くんの手を放せずにいた。
早く、その手を引っ込めてくれ……
「実はオレも怖いんだよね〜」
優司くんは、手を引っ込めるどころか強く握り返してくれた。
「『も』って一緒にするな」
繋がった手から、優司くんの嘘が伝わってきた。
私の手は恐怖で冷めきり震えているのに、優司くんの手は温かくしっかりしている。
それから、橋の上を通り、市内の明るみに出るまで、優司くんは私の手を握ってくれていた。
優司くんの優しい嘘が、
嬉しかった。