あかねいろ

『大斗さん?自分が靴を履いているのを知ってやっているの?』

「知らなかった」と答える大斗を目だけで威圧する夕陽。

『可愛くねぇ女が2人もいるぜ』

すかさず横から咲の蹴りが跳んできたのは言うまでもない。



それからは常連客も一緒にマスターの料理やお酒でみんなで騒いだ。

『大斗君?』

いつか見たことある女の人が大斗にプレゼントを渡す。

彼は何かモグモグしながら受け取り、にっこりと微笑んでいる。

少し離れた所で夕陽はそれを眺めていた。


でた!!営業スマイル!!


「今日―…」女が何か言いかけたが「ひろとー!!こっち来なさいっ!!」咲が大斗を呼んだので遮られてしまった。

大斗はもう一度笑うと、皿を持ったまま咲と夕陽のとこまでやって来た。


『はい♪ぷれぜんと♪』

そう言って咲はUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみを渡す。

『これ、俺が取ったやつじゃねぇか?アホか?』

咲は意地悪く笑って

『咲様から物を貰えたのよ?敬いなさい♪』


そして、ぬいぐるみを渡すと「そろそろケーキ食べようかしら♪」と行ってしまった。


あ…。

あたし何にもあげるの無いや…誕生日だって知らなかったけど…。


『ごめん…あたし何もないや…』

と呟く夕陽に

『これがあるからいい。むしろ充分じゃん?』

と答えた大斗。

彼が「これ」と上げた皿には食べ掛けのケーキ。


あ…あたしのケーキだ。


『あーっ!!バカ大斗!!』

ケーキ台で皿を見つめていた咲が、叫んでマスターの方へ走って行く。

『大斗がケーキ全部たべちゃったのぉーっ!!』

と嘆いている。

夕陽はそれを眺めながら大斗に向き返ると

『片桐さんが作ったんでしょ?うまかった。ありがとう』

と例の笑顔で言われてしまった。

恥ずかしくて瞳を逸らし、うつむく夕陽。


何であたしが作ったってわかったんだろう?


『ワンホール一気食いしちゃった♪』

クックックッと笑う大斗を「えっ」と見ようと顔を上げた瞬間…


ドカッ!!


視界から大斗は消えていた。

駆けてきた咲に飛び蹴りされていたのだ。


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