あかねいろ
夕陽はグズグズな顔で泣き笑い。
大斗は彼女の頬を両手で思い切り引っ張った。
『はひふんのよ…』
『俺はビショビショなんだ。今日はこれだけで許してやる。お前お詫びに宿題見せろよ?!』
和やかな空気が充満した。
南深の恋が実った事に胸がいっぱいの夕陽。
言葉は出なくて、ただボロボロ嬉し涙を流した。
南深は、ちょっと困ったように夕陽を見て瞳を潤ませる。
その後は早上がりの大斗も一緒にテーブルを囲んでみんなで騒いだ。マスターが特別のご馳走をサービスしてくれたのだ。
~♪~♪~♪~
電子音が大斗を呼ぶ。
『はい?どした?』
大斗はご機嫌で電話に出る。
あ、この大斗わかる。咲さんだ。
電話越しに穏やかな顔で頷く彼を見て、すぐに電話相手が咲だと夕陽は気付いた。
『悪い、咲んとこに行ってくるね』
電話を切ると笑顔を残して早々Barを出て行った。
『ね!大斗と咲さんは特別なんだよ。あたしは2人がうらやましい』
夕陽は大斗の出ていった扉を見つめて静かに言った。それはただ純粋に2人を"いいなぁ"と想う彼女の言葉だった。
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南深と恭次の帰り道。
『ねぇ?恭次?咲さんと神崎君って、どんな関係?』
『どんななんだろうね?なんか不思議な関係じゃない?』
「答えにならないよ」南深は頬を膨らませて呟いた。
『ひぃちゃんと神崎君、お似合いなのになぁー』
恭次は静かに笑って
『何でも、物語みたいにうまくはいかないだろ。俺らだって16年かかってまだこれっぽっちだ。』
と答える。
『うん…』
『そうだよ。大斗の場合は特に問題。あいつは昔からどこか恋愛に実体がない。アイツが色恋ってのは、そう簡単にはいかないよ。』
月夜の帰り道。
南深の手をそっと握った恭次と真っ赤な彼女…
南深と恭次の物語りは、ゆっくりゆっくりページがめくられていく。
夕陽や大斗、咲の…みんなのこれからはどうなっていくのだろう。
夜空が見守る中、こうしてそれぞれの時間はゆっくりと紡がれていくのだった。