あかねいろ
『あたし…実はここ、拓ちゃんの来てた学校だから選んだんだぁ…まさか会うなんて考えたことなかったけど…』
拓巳の顔をちゃんと見て話す夕陽。
大きく深呼吸をした。
『あのね…、あの時はごめんなさい…あたし、最後まで拓ちゃんに迷惑かけてばっかりだった。自分勝手な酷いこと沢山した…』
ずっと、言わなきゃいけなかった事…
『夕陽、それは違うよ…』
拓巳は柔らかく言う。
拓ちゃんのあの笑顔だ…懐かしい。
夕陽は同じような表情で頷く。
『拓ちゃんは…元気?』
夕焼けと拓ちゃんが重なって「元気だよ」と顔から伝わった。
『朝はね、もう本当にどうしようかと思ったの、心停止寸前っ。でも今は案外話せてる…』
クスクスと夕陽は笑う。
気持ちに余裕が感じられる。
『俺も…、実習初日なのに全く手につかなくてさ…』
少し項垂れる拓巳。
『拓ちゃんにもそんな事あるんだね?なんか意外!!』
『ハハッ…。俺は結構駄目人間だからね』
『うそぉ…!拓ちゃんはいつもあたしにとったら大人でカッコ良かったよ』
そよそよと風が吹く。
『そんなことないよ、いつも余裕無くってね』
それを聞いて何かに気付いたように夕陽は…
『無理…してた?…あの頃?』
恐る恐る問う。
『違うよ、俺はね、夕陽が居たからいろんな事、頑張れたんだ。』
頬が桃色になった夕陽を見て拓巳はクスクスと笑う。
『夕陽は、あの頃より更にキレイになったね。』
それを聞いて彼女は静かに笑うと、手すりに寄りかかる。
『今思うと拓ちゃんって、結構恥ずかしいことサラッというんだよね?』
「あはは、そうかぁ?」拓巳は苦笑する。
それからピタッと笑いを止めて彼女の顔をじっと見る。
『夕陽…会いたかった』