あかねいろ
『どういうことだよ?つーか、何で来るんだ?!俺、授業参観なんて教えてないぞバカ咲っ』
大斗は咲に叫ぶが、咲は口に人差し指を当てて
『静かにしなさい♪』
とにっこり言うだけだった。
拓巳は我に還ってコホンと咳払いをし、
『本当すげー学校…』
と呟き、今度は笑いを堪えながら
『すみません、授業を始めますね』
と無理やり優しい笑顔を作り授業を始めた。
『た…拓ちゃん…ぎこちなさ過ぎる…』
咲と拓巳が知り合いなのは一目瞭然だった。
夕陽はパニクりながら、咲と拓巳を交互に見て落ち着かない様子。
大斗は咲が来た事にふて腐れてぶすっと頬杖ついて顔を背けていた。
他の親達が不思議そうに立っている中、淡いピンクのスーツを着て、にこにこしている咲は一際目立っていた。
しかし、さすが拓巳、一時は取り乱していたが、冷静に授業を進めていく。
余裕を取り戻し、次々と生徒を当てて、当然の様に大斗も当てられる。
大斗がふてったまま立ち上がると
『あんたちゃんと答えなさいよね?!』
と咲の声。
『絶対地獄に落としてやる…』
大斗は咲に向かって小さく言うと、問題に答えた。
正解を言う大斗に咲は拍手。
咲さんってやっぱりすごい…
唖然とする夕陽だった。
やっぱり、この状態で何をしてもやっても周りが何も言えない雰囲気を作り出してるよ。
そう思い咲を見る夕陽に彼女はご機嫌で「ゆうひちゃーん♪」と口パクで手を振っていた。
――――――
チャイムと同時に挨拶を済ませた拓巳はそそくさと教室を出ていく。
『あっ逃げたっ♪』
咲は周りには聞こえない声で呟き、クスクス笑ながら楽しそうに拓巳の後を追った。
それに気付いた夕陽と大斗も慌てて続いていく。
『ちょっと!!大斗っあの2人知り合いなの?』
『知らねぇよっ?!でもそうらしい…全く何なんだよマジで?!』
2人を追いかけていくと…
『夕陽こっち』
大斗に促され階段を駆け上っていく。
2人が入っていった屋上のドアをそうっと開ける。