あかねいろ
『大斗はね、良くも悪くも結構有名でさ。恐れ多き神崎くんに俺がエロ本抱えて廊下歩いてる時ぶつかったのよ、廊下に本が散らばってさ~』
『俺が拾い上げて「これ何?」って一言聞いたわけ。恭次は「エロ本」って一言』
『それから思わず「知らないの!?」って聞いちゃって、大斗は「知ってる」って答えて。いやさ、大斗は喧嘩ばかりだし、派手派手なねぇちゃんがバイクで学校迎えに来たりとかで、みんなから怖がられてさ、おまけに殆んど喋らないときた』
『派手派手って…まさか咲さん?』
『あったり!!』
恭次はにっこり。
『こっそりカッコイイ♪って言ってるヤツらもいたけど、大斗がまともに誰かと会話してる場面見たことなくて、不意に話しかけられて俺も最初ビビッちゃって』
クックックと大斗と恭次は揃って笑っている。
更に恭次は続ける。
『で、たまたま開いてたページにナンシーがいて、大斗は「このヒトすげー」って呟いたの。何かその時、"なぁんだ神崎大斗も普通の少年だな"って当たり前だけど思って、持ってたエロ本全部渡して、「友達になろうぜ!!」って言ったんだ。俺、基本人見知りしないし♪』
『俺さ、どうしようもない中学生だったから、話しかけてくるヤツもまず居なくて、変なヤツだって思ったよ恭次は。』
『でも、あの日 大斗が機嫌良い日で良かったよ。』
『へ?』
『でなかったら、俺ぶつかったってボコボコにされてたかも・・・』
ワザとっっぽく項垂れる。
『どうだろうねぇ~?』
なんでか、大斗はご機嫌で答えていた。
大斗は恭次が被っていた雑誌を捲る。
劇裏の最新号。
『それに俺…エロ本とか見たことなかったし♪』
大斗さん…あたしには「欲を満たすのに生身の女が居るからエロ本なんて不必要♪」と聞こえますが…
夕陽は眉を歪めて呆れて大斗を見る。