あかねいろ
灯を…
ふわぁ
咲の身体と花の香りが宙に舞う。
ビールの缶が床に転がった…
咲をゆっくりとベッドに寝かせた大斗は
彼女の首筋にひとつキスをする。
『ひろと…?』
『ん?』
そしてブラウスのボタンを
ひとつひとつ…
壊れ物に触れるかのように…
ゆっくりと外してゆく。
『大斗ぉ…』
自分の名を呼ぶ咲の…
胸にキスをする。
白い肌にキスをする。
『なに?』
再び顔の上に帰ってくると彼女を見つめた。
『ひろ…』
咲が見上げた大斗は、
何ていう悲しい顔をしているのだろう。
お願い…
そんな瞳で見ないで…
大斗…
咲は一度強く瞳を閉じ、
あたしは、もう大丈夫…
と、ゆっくり開き
ひとつ笑みを溢した。
そして大斗がしたように彼のシャツを脱がせてゆく。
『泣か、ないで…大斗…』
大斗は決して涙が出ているわけではない。
でも咲は言う。
俺は別に泣いてない。
もう涙は…
――っ。。。
大斗のシャツが宙を舞った。
ハラハラ舞って地面に堕ちて行く…
パサ・・・
咲は同時に彼の首を強く引き寄せ、首筋にキスをする。
大斗を見て、笑う。
あの顔で…笑う。
2人の間にキスの雨。
咲の頬に
咲の身体に
大斗の胸に
刺された傷跡に
散りばめるように
キスをする。
ただ求めるままに…
咲は大斗を見つめて、また笑う。
『ちょっと待っててね』
彼女はスルリと大斗の身体をすり抜け鞄の方へ。