あかねいろ
半ば飛び込むようにして、
気付いた時には…
大斗を…
抱き締めていた。
『あんた…何してんの…?』
再び小さく問いかけた。
『ゆーひ…俺…駄目だ…』
大斗は消えそうな声でそれだけ言って、あたしを強く抱き締め返す。
心臓がドンッと撃たれた気がした。
さっき止めた涙は…
涙腺は、一瞬にして破壊されてしまった。
『ひろとぉぉぉー!!!』
大泣きしながら強く強く大斗を抱き締めた。
あたしの胸に居る大斗は…
氷のように冷い。
『あ、あたし…咲さんに…会ったよ…』
大斗はぎゅっと腕に力を入れる…
『大斗…携帯…繋がらない…から…』
『さっき…折って…投げた…』
はっとして、大斗の顔を見た。
瞳が合ってしまったあたしは、少しも逸らせなかった…
氷になって、砕けて消えてしまう…
大斗が…
違う…それは大斗を目の前に見たあたしが、かもしれない…
あたしの涙が大斗の身体に落ちていく…
言葉なんて今は何もいらない…
そう思ってしまった…
凍りつく前に溶かさなければ…
必要なのは温かい熱…?
もしかして…大斗と咲さんが触れあうのは…
この為…?
だったらなんて悲しい事だろう…
そう思っているのに…
あたしは…
無意識に大斗に唇を重ねていた。
自然と瞳を閉じて…
びっくりして瞳を開いていた大斗は、すぐに…
ゆっくり瞼を降ろす。
泣き過ぎな上に口まで塞がって、息ができない。
既に自分がいったい何をしているのか…
わからなかった…
頭がおかしくなったのかもしれない…
ドサッ…
突然、夕陽の身体は大斗に倒されベッドに倒れ込む…
瞳を開けると自分に覆い被さる大斗が見えた。
とんでもない状況なのに…身体が動かない。
整った大斗の顔が…
月明かりで一層綺麗に見えた…
あたしと大斗の時が止まった…