あかねいろ

――

うん…

大丈夫だよ…大斗…


『あのね…あたしには、正直わからない…咲さんと大斗が離れる必要はあるのか…あたしには理解できない…。けど…』


あのね…


『曖昧に離れるのは、駄目だよ…!!あたしに、それを教えてくれたのは大斗だよ。あたしは…ずっと拓ちゃんに踏ん切り…付けられなかった。同じに…昔そんな咲さんを…大斗は知っているんでしょ?』


咲さんと光輝さんの別れ…

肩越しに大斗がハッとなるのがわかった。


ねぇ?!そうだよ!!

行かなきゃ…!!


『ひ…大斗…行こう!!今行けば、まだ間に合う!!咲さん、6時半の飛行機だって!!』


あたしが来て、したかった事は、きっとこれ。

涙を拭って大声をだした。

大斗を連れていかなくちゃっ!!


『咲さんは、「大斗が幸せになるには、自分が幸せにならなきゃいけないって、自分の力でならなきゃいけない」って…言ってたよ』


少しの間だけ、このまま…。

もう少し…抱き締めているからね…

宥めるように、「平気だよ」と伝えるために、背中をポンポン叩いて、優しく擦る…


これは大斗が涙を止める時間だよ…


ゆっくりと身体を離して彼を見つめた。


『行こう!!このまま行かせたらいけないよ。ちゃんと、会いに行こう!!』


しっかりと言った。

大斗の瞳を見据えて言った。


『強引に引き留めればいい。でも、もし…離れる事が…大斗の答えなら…。』


あたしの涙は少しずつ引いていく…


『咲さんは言ったよ。「世界で一番大斗に幸せになって欲しい」って。ねぇ?大斗はどうなの?』


優しく問いかけた。


『俺…』


――

俺が見た夕陽は綺麗に笑っていた。


俺は光と熱を取り戻す…


!!


そうだ…何をしていたんだ!?


落ちてるシャツを拾い上げて、夕陽の手を掴んで勢い良く家を飛び出す。


『ひろ…』

戸惑う夕陽にメットを強引に被せると

『お前も来い!!』


と叫んでバイクを走らせた。


夜風が酷く冷たい…

でも、もう怖くない…


咲…俺、本当はわかっているんだ…

俺は…


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