あかねいろ
咲さん…
あなたの笑みは、人を幸せにする笑顔です…
大斗から顔を離すと咲は夕陽に言った。
『後…これ、夕陽ちゃんが持ってて』
咲が夕陽にポンと投げたもの…
キラキラ+ キラキラ+
『これ…』
いつか夕陽が拾ったキーホルダー…
あの時と違うのは、中に指輪が付いてなかったこと…
夕陽があたふたしていると…
『夕陽ちゃん…コイツよろしくねっ!!』
トン…
そして咲は大斗を自分の前から静かに押し出す。
『行ってきます』
『――・・・…ッ―――・・・』
吸い込まれてしまう…
あたしは、伝えたい事が色々あるはずなのに、言葉がひとつも出てこなかった。
1、2、3歩…
こっちを向いたまま後ろに下がった咲さんは…
4歩目に後ろを向いた…
『咲っ!!元気で!!』
空港内に大斗の声が響き渡る…
『咲さん!!ありがとう!!』
やっと出せた言葉をめいいっぱい大きな声で。
咲さんは、そのままトン、トン、トンと軽快に歩みを進めた…
もう、振り返ることはなかった…
でも、気持はちゃんと伝わっている、はず…。
ですよね?咲さん…?
陽が昇る…
朝焼けと共に…
咲さんの背中がキラキラしていた…
『綺麗…。夜の闇にも…街のネオンの煌めきにも…それで、陽の光にも負けないんだ…』
『何だ…?』
『咲さんは、そんな人ってこと!!』
あたしは、そう言って、大斗の背中をバンッと叩いた。
『イッテェなっ!!バカ!!』
『夕焼けじゃなくても、空はこんなに綺麗に染まるんだね?!』
あたしは駆け出した!!
『オイッ!!ゆーひ!?』
そして、振り返る。
『大斗?!海行こう♪!!この茜色の空が綺麗な内に!!』
また前を向いて走り出した。
バッ!!
『きゃぁぁぁあっ!!』
大斗は夕陽を追い抜いて、その時にスカートを捲る。
『早く行くぞ!!』
『バカーッ!!待ちなさいよっ!!』