あかねいろ
『光輝さんは俺達が中学の頃に、美術の特別講師として学校に来てたんだ。』
静かに語る。
『昔から独特の世界を持っている人だったよ。ニューヨークでブランド立ち上げたのには驚いたけど』
『そう…』
夕陽は答えた。
大斗は何も言わなかった。
『今だから言うけど、俺も結構ヤンチャだったから、咲と仲良くってね。って俺等は本当に何もないただの友達だったけど。』
と苦笑い混じりに微笑む。
『た…拓ちゃん…わっ悪かったの…?』
恐る恐る聞く夕陽。
『そんな事ないよ、きっとコイツよりは可愛かったはず』
大斗を見て拓巳は言う。
それを睨見返す大斗には
『よかったぁ♪じゃぁホッとする』
と夕陽。
『このブス…』
そんな大斗をさて置き話しは続く。
『そんな中、咲は光輝さんに会って途端に女の子になっちゃって…。2人の惹かれ合う姿は…思い出すと本当に…』
昔を思い出して遠くを見る拓巳。
そして、拓巳は大斗を見る。
『でもね…再会した時も、ニューヨークに行く時にくれた電話でも、今の咲はお前の事ばかり言ってたよ。』
大斗の瞳を見て、そう言った。
拓巳がグラスを揺らすので、氷がカランと鳴った。
『咲が自分の事、差し置いて、人の事ばかり考えているのは、正直驚いた。それだけ、すごいんだな、お前等の関係』
拓ちゃんは大斗の瞳を見据えてはっきりと言う。
その顔から本当に強い咲さんの想いが伝わってくるようだった。
『知ってる』
大斗はやっぱり一言だけ返していた。
その顔は「当たり前だろ」と、生意気な笑みを浮かべて満足そうだった。
なんだか、とても安心した。
そうだよ…恋人だからとか友達とか、
そんな関係も、遠い所に居るとかも関係ない。
咲さんと大斗の世界には、
そんなことは…きっと全く関係ないんだ。
それだけ繋がりが強いから…
良かった。
大斗元気そう…