あかねいろ
と苦笑いして、「ちょっとゴメン」と電話に出る。
『もしもし?おバカ?』
〈じじぃがお前を呼べってうるさい。ホワイトデーだっつって。今何してるの?〉
『今ね、雅君とご飯食べてる』
〈あぁ?〉
途端に機嫌が悪い声。
『え?大斗?聞き取れなかった?』
それを夕陽は電波が悪いと勘違いしている。
〈ちげーよ…〉
もぅ大斗は本当に素っ気ないんだから…
『ご好意に甘えて、後で行くね♪しげさんに会いたいし♪』
〈勝手にしろ〉
ツーツーツー。
はい?
電話は切れてしまった。
ポケーっと携帯を見つめて「何だ?」と首を傾げる。
『どうしたの?』
『うん。電話、大斗からなんだけど、スイートブルーのマスターがホワイトデーにあたしを呼んでるって。何かいきなり電話切れた感があって…??ってまぁいいや。』
『夕陽ちゃんってやっぱり神崎と特別仲良いよね?好きとか?』
少し遠慮がちに雅は聞いてくる。
はぁぁい?!
『なななにそれ?!もう、雅君まで止めてよ。みんな聞いてくるんだけど、確かに仲良いけど友達よ!!大斗は恋の対象外だし。大斗には大事な人がいるよ』
ちょっと動揺してしまった…
好きなんかじゃ…っ
違う違う!!
『大事な人ってクリスマスの…?』
咲さん…
きっと…
大斗の中には咲さんがまだ変わらずに居るだろうなぁ…
『そうだよ。外国に行って離れてしまったけど…』
「付き合う」とか関係なくて…
大斗と咲さんの繋がりに至るまで、そこに入る事なんて誰にもできないの…
そんな事を思いながら、ひどく切ない顔をしていたのは夕陽は自分でわかっていなかった。
『そう…』
雅は夕陽の表情に気付いて、寂しそうに呟いた。
すると、すぐに料理が運ばれてきた。
それにより、空気が和らぎ雅もほっとしたようだ。
「いただきます♪」と夕陽がまた明るく笑ったから。