あかねいろ
大斗の瞳から逸らせられない。
『俺…情けねぇから、マジで開けられなくて…お前が帰ってきたら一緒に読んでほしいんだ。お前はさ、この手紙に何が書いてあっても俺を励ませるくらいすっきりして来いよ。』
午前中の太陽が、会話の内容に似つかわしくなく照りつける。
『もう思ったこと言えなかった夕陽じゃねぇよ、お前は。だから…』
大斗が一生懸命にあたしの肩を押そうと話してくれている。
『あたし…』
夕陽は静かに口を開く。
『小学校2年生くらいまでイギリスに居たの。英語ができるのはその為、両親は忙しいなりに時間を作ってくれてた。お世話してくれるシッターさんもいて…』
胸が苦しい…
『それから日本に来て、物心ついてきた頃、周りの友達とあたしん家の家族がしてること、余りにも違って、出掛けたり…とかできなかったから…』
『うん』
『大斗のほうが…もっと辛かったのにね…反抗期ってほどじゃないけど、寂しいって言えなくて、会話が減って…中学生になった』
思い出せば辛くなる…
『自分で言うのも変だけど、あたしの両親はお医者さんの中でも有名で雑誌のインタビューに「少しでも沢山の命を助ける力に…」とかの文を見て、何も言えなくなった。命を救ってほしかったもん』
それを聞いて大斗はため息。
え?
『バカだなお前は…』
『え?』
『沢山の命が救えても、自分の家族救えないんじゃ駄目だろ?俺の親もお前の親も親失格』
きっぱりと言った。
『でも…お前も俺も「寂しい」って言わなかったから子ども失格だ。』
『…』
『ちょっとすれ違っただけで誤解は重なる。偉そうなこと言えねぇけど…。でも電話くれるってことは気にしてるって事だろ?』
『そう…なのかなぁ?』
『だから、夕陽はあんぽんたんなんだ…』
呆れて大斗は呟く。
『雪那さんやマスターは俺の親みたいなもん…かな…?あの人達は普段何にも言ってこない。でも俺が無茶苦茶したり言った時は、真正面から当たってきてくれる。容赦なく。俺がちゃんと向き合ったから。だから想われてんだなって、自分でわかったんだ』