あかねいろ

なんだ?しまった。全く話がわかんねぇ…


菜穂は楽しそうに大斗の手を引いて歩きだした。


『菜穂ちゃん』

その手をサラリと離す。

『もうっ!!一緒に帰ってくれるんでしょぉ?』


なんだそれ…知らねぇよ。

でも最早かわす力がない…


大斗は半ば諦めというか、どうでもよくなったらしく、歩きだした。


『なんかぁ…夕陽先輩ってモテるんですね?あたしのクラスもみんな噂してます。』


何の気なしに大斗に菜穂は言う。


『あぁそう』

動揺を気付かれないよう、しれっと返す。

『大斗先輩は相変わらずモテモテなのに、あんまり女の子に興味ないですよねぇ?』

「つまんないのー」と小さく拗ねている菜穂は言う。


バレてないらしい…


『あぁ…そう?』


なんとか笑い返した。


そりゃ基本は興味ないし。もう夕陽以外はマジでどうでもいい…


『また…会いに行っても良いですか?』


勝手にすればいいと思ってしまう。

本当にどうでもいい。

俺って、いつもどうやって世間の女をあしらってたっけ?

とりあえず、笑っておいた。

喋るのも億劫だ。


『はーい♪』

その大斗の顔を見て菜穂は機嫌良く答えていた。


〜♪〜♪〜♪〜


―着信。恭次―


『はい』

〈何?お前、いつの間にどこいんの?生き還った??〉

『あー。帰り道?』

〈なんだそれ?まだ死んでるね…。まぁいいや。今日、舞と瑠璃ちゃんが飯作るって言ってるけど来る?〉

『わかった。すぐ行く』

そうして、電話を切ると

『夕陽先輩ですか?』

すかさず菜穂が問う。

『違うよ。俺出掛けるからここでね』


とりあえず笑って言った。

たぶんこれで、かわせるだろう。


『はぁい♪明日また会いに行きますね♪』

そうして菜穂は帰っていった。


< 347 / 469 >

この作品をシェア

pagetop