あかねいろ
『じゃぁ、また明日ね』
大斗はそれだけ言って帰って行った。
夕陽と別れ、大斗はゆっくり自転車を漕いでいた。
月が光る星のない夜を感じながら…
しっかし、片桐さんはグズグズのヒデェ顔を見せる。
全く俺に興味がないらしい。
あの泣き顔は、男に見せるもんじゃねぇ。
全く、咲も何を言ったのか。
大斗は夕陽が感激して泣いていた事に気付いていた。
俺には真似できねぇな。
変な女。
〜♪〜♪〜♪〜
大斗にもタイミングよく呼び出し音が鳴る。
〈大斗くん?!ごはん終わったのぉ?今から会えるかなぁ?〉
相手は仕事場の常連さん。
ファミレスでの電話はこの彼女だったようだ。
彼に言わせれば俗にいう都合の良い女である。
こうして呼び出され、その場のノリで遊ぶ。
告られても、決して付き合ったりはしない。
俺は自由でいたいのだ。
彼は生粋の自分勝手だった。
学校では決して見せない大斗の姿がここにある。
誰でも少しばかりの闇は持っているだろう。
大斗の過去が絡み、未だに抜けきれない部分はこうした形で現れる。
彼の周りに寄る女達は必ずいつもパーフェクトな姿を見せ、そんな馬鹿馬鹿しいプライドを持った女ばかりだったけれど、彼にすればそれなりに面白い事のようだ。
そして深く踏み込めない雰囲気を作って、うまく付き合えるように持っていく。
あれやこれやの要求や詮索をしてくる女もいるが、うまく流しかわす。
間違いなく高校1年生がすることではない。
何が彼をこうしたのだろう…。
更に彼は学校は学校で、告られようものなら
「忘れられない人がいて、まだ誰かと付き合うとか考えられない…」
と独特の雰囲気と共に意味深に答える。
忘れられない人って誰だよ?!そんなのいねーし♪
大斗は「女子高生の噂話は面倒臭そうだから」と学校内では大人しくしていたいらしい。
手を出す気はないのでその答え方がベストだった。