あかねいろ

約束


―――――
―――――――


朝から雨が降っていた。


『みぃちゃぁぁぁんっ!!』

『ひぃちゃんどうしたの?!』

何故だか嘆きながら1組にやって来た夕陽。

『あのねぇーっ?!英語の教科書貸じでぇ゙ぇぇ?!!』

『うん。いーよ♪でも、ひぃちゃんが忘れ物なんて珍しいね?』

『ゔん、家に無かったから学校かな?って思ったら学校にもないのだ…神隠しかもしれないーっ!』

「はいはい♪」と笑いながら南深は教科書を取りに行く。


『お?そこのバカちゃん♪どしたんだよ??朝からうるせぇぞ。何だ?俺に会いに来たのか?』

何だか機嫌の良い声が背中から聞こえた。

『出た…』

夕陽は恐る恐る振り返る…


ドン。


『うわあぁぁあぁぁあっ!!』


近い。近い。近い。近い。近い。近い。近い。近い。近い。近い。


振り返ったら大斗の身体にぶつかってしまった。


夕陽の真後ろピッタリに立っていた彼。

夕陽の顔との距離がギリギリ。

大斗のドアップに見下ろされる。


『おめぇよぉ…人の顔見て叫ぶとは失礼じゃねぇか?あぁ♪?』

大斗はニヤニヤと詰め寄って来た。

『だだだだだ…だって顔近すぎるわっ!!悟空は天竺目指してさっさと消えなさいよっ!!』

『バッカじゃねぇの?つまんねぇことばっかり言うなよタコ!!』

『もうっ!!早くどいてー!!早くでてけー!!』

夕陽は廊下に向けて両手で大斗を押し出そうとする。

『僕の教室だよ♪?出ていくならお嬢ちゃんのほうだね?♪』

一生懸命押したところで大斗の力に適うはずはない。

『ひぃちゃん…?』

そこへ2人のやりとりを見ていた南深が申し訳なさそうに声をかけた。

『ごめんっ!!みぃちゃん!!英語の教科書!!』

ハッと夕陽は向き直る。「はい」と南深は教科書を差し出した。


『お前、何で借りてんだ?』

きょとん。と聞く大斗。


『何でって忘れたからに決まってるじゃない?!』

『だって、俺持ってるけど?』

『はい?!』

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