あかねいろ
『借りたじゃん♪』
って…
『いつ?』
『昨日の昼』
『貸した覚えないですけど…?』
『そ?ほら♪』
と大斗は教科書を取り出す。
『アンタね?また勝手に鞄漁ったんでしょ?』
『はぁ?人聞き悪いな?みんなのモノは俺のモノ。お前のモノは俺のモノだ♪』
この人…絶対マンガの受け売りなんかじゃなく、本気で素直に思ってるんだわ…
『もうっ!!いーもんっ悪魔に日本語話したのが間違ってたわ…!!ごめんね、みぃちゃん…。アンタ早く返しなさいよね!!』
そう言って大斗から教科書を奪う。
『一刻も早く牛魔王に食べられてしまえ!!てゆうかサルが魔王だ!!』
と教室を出て行く。
意味分からん…
ふっ。変なヤツ。
あ…
『夕陽!!』
大斗は廊下を行く夕陽の背中に叫んだ。
ピタッと気付いて彼女は振り返る。
『昼。上。弁当』
なんか…少々暗号化してますけど…
と夕陽は大斗のセリフを考える。
えっと…
「今日は屋上に居なさい、お昼のお弁当は一緒に食べよう」
翻訳完了…
多分こんな感じだと思う。
そして、なぜか命令調…(笑)
あれ?
あれれ
『あ?!』
ハッと夕陽は声をあげる。
『うん!!』
そして笑った。
この会話は、とっても些細な事…
些細なセリフ。
それでも気付いた1つの事。
大斗と夕陽は
初めて…「待ち合わせ」をした。
初めて…「約束」をした。
言葉に示した2人だけの「会う約束」をした。
『雨絶対止むぜ』
クスッ。
その自信は何で?
根拠が無さすぎる
でも、きっと…
雨は止む。
そんな気がしたよ。
『後でね♪』
夕陽は笑顔で返事をした。
あ…笑った
この顔…
好きだな、俺。
その顔…いっぱい見たい
夕陽の笑顔を見て大斗も柔らかく笑う。
『俺気分良いからサボろ♪』
夕陽が行ってしまうと大斗は嬉しそうに教室を出ていった。