あかねいろ
約束…
いつも思い付いたまま動くから、先の事なんて考えない。
だから…必然的に「約束」なんてしない。
でも…
「約束」もいいな…
ただ、次第に近づく時間がこんなに楽しみになるんだ。
大斗はそんな事を思いながら歩いていた。
―――――――――
『ひろっとせんぱーい♪』
昼休みを告げるチャイムが鳴ると大斗を呼ぶ声。
『菜穂ちゃん…』
早速屋上に向かおうとする大斗に勢いよく話しかける。
『いつか約束したからぁお昼一緒に食べませんか?』
『俺ね、用事あるんだよね』
クラスメイトが注目する中、大斗は言った。
『いつも同じセリフじゃないですかぁ?先輩いつもお昼いませんよねぇ?どこ行ってるんですか?』
どこって…
『寝てる』
『それ、答えになってませんよ?先輩ってお弁当は?』
弁当が屋上で待ってますって…
夕陽…来てるかなぁ…?
『さっきね、夕陽先輩のとこ行ったんですけど、居なかったんです』
夕陽は上に居る、な?
早く行きたい。
『そう。ちなみに菜穂ちゃんは何で夕陽に会いに行くの?』
『だってぇ、先輩が仲良しでしょ?あたしも仲良くなりたいなぁって』
やっぱり…何を考えてるかイマイチわからない…
『そう。まぁ迷惑かけないであげて』
そう言って大斗は歩き出す。
『待ってくださいっ先輩!!』
菜穂の呼び止めに聞き耳持たずに3階の渡り廊下を歩いていく。
『先輩っ屋上行くの?!』
彼の背中に叫ぶ菜穂。
その問いかけに大斗は歩みを止めて振り返る。
何だよコイツ
『悪いけど、ほっといてくれる?』
もう周りには誰も居ない場所。
いい加減、何か言ったほうがいいかもしれない、な。
そもそも何で屋上の事知ってるんだ?
今日は夕陽と約束してるんだ。
邪魔しないでくれ。
『悪いけど…』
大斗の言葉を遮り菜穂は言う。