あかねいろ
――――――

先生に用事頼まれてたらちょっと遅くなっちゃたよ…っ

早くいこー♪大斗待ってるかなぁ??


『夕陽ちゃん♪?』

教室を出ていこうとする夕陽は誰かに呼ばれた。

『はーい?!』


って…


『大沢くん?!』

昼休み夕陽のクラスにやって来た傑。


『どうしたの?』

少し驚き気味に夕陽は問いかける。

『会いたくなってね♪クラス違うからこうでもしないと会えないじゃん?』


へっ…?


『お昼一緒に食べない?』

傑は軽い感じにそう言って、夕陽の手を引いていこうとする。


『あのあの…あのね?!』

夕陽は戸惑いながら声をかけ立ち止まる。

『迷惑?』

『迷惑っていうか…』


今日は大斗と「約束」があるの…

初めてした「約束」があるの…


『あのね、今日やくそく…約束があって、約束してるの…』


なんでか「約束」を3回も言ってしまったっ


『え?誰と?』

『誰って…えっと…』

『神崎?』

『へ?』

つい間抜けた声が出てしまった。

『付き合ってんじゃないんでしょ?あいつ…辞めなよ。俺、中学からの神崎の事知ってる、良い噂聞かない。』


大斗の中学時代…


『良いように使われるだけだよ?いいの?』

『あの…』

『さっきも、1年が来てて2人でどっか行ったし、そういう事でしょ?だったら俺でもいいじゃん?』


1年って…きっと菜穂ちゃん…

でも…


『ゴメン…今日は約束だから…』

夕陽は苦笑いで傑にそう言うと教室から駆け出した。


そんなの言われなくてもわかってるよ。

あたしが一番わかってる。


私は…桜の花にはなれないもの…

大斗にとって、それ以外は誰もみんな同じ…

そんなの言われなくてもわかってる…


でも…

「約束」なの…


ただ…それだけ…

それだけを…信じたい…


ねぇ…大斗…?



駆け出して3階の渡り廊下を抜けるとピタッと止まる。

静まり返った廊下を鞄を抱えてトボトボ歩く…


何だか沈んだ空気…

雨が上がった、雲が厚い空。


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