あかねいろ

すれ違い


名前を呼ばれ夕陽が伏せた顔を上げると目の前に菜穂が立っていた。

『まだ居たんですね?ずっと聞いてたんだ?盗み聞きですか?』

先程夕陽を見た顔で菜穂は笑う。

『でも、調度良かった。あたしね、聞きたい事があるし』

夕陽は少し顔を上げた。

『な…に?』

『夕陽先輩は大斗先輩とエッチしてるの?』


えっ…


『先輩は女の子を呼び捨てにすることなんてありません…』

夕陽は突然言われたことに全く理解が出来ない。

『大斗先輩は何度お願いしても、苗字は変えてくれたけど、あたしの事「菜穂ちゃん」って呼ぶ。なのに先輩は何で「夕陽」って呼ばれているの?』


名前…?


『夕陽先輩は何で「大斗」って呼んでるの?どうお願いしたの?先輩は周りの女の子から呼び捨てなんて絶対にさせないのにっ!!』


呼び捨て…?


菜穂は夕陽の顔を見据える。

『どっちも…夕陽先輩と咲さんって人しかいない!!』


そして…強い目で続ける。

『綺麗で有名な咲さんならわかるけど…夕陽先輩は何かしたんでしょ?何して気を引いたの?!』

菜穂の言葉がグルグル頭の中で回る。


『昔…大斗先輩があたしと居る時に電話が来て…「咲!!」って言ってそのまま行っちゃったの。先輩に会っても最後には必ず「咲」って人が来て、先輩はあたしに振り向きもせず行っちゃうのっ』

菜穂の声は震える…

『その時は諦めようと思った。でも…今、咲さんは日本に居ない。噂で聞きました』

菜穂は大声で言った。


『大斗先輩が咲さんを選ぶのはわかります!!でも夕陽先輩は…っ』


言わないでっ!!


『やめて!!』


菜穂は夕陽の言葉に耳を貸すことはない。

『夕陽先輩は所詮、咲さんの代わりでしょ?たまたま近くに居たのが夕陽先輩だっただけじゃない?!』

『やめてよ!!』

夕陽は今にも泣きそうになって再び叫んだ。

『お弁当作ってるのも知ってます!!それだって、ただ都合良いからじゃない?!だったら、あたしだって誰だって同じでしょ?あたしはずっと大斗先輩が好きだったんです!!夕陽先輩は大斗先輩の事「好き」って言わないのに邪魔しないでよっ!!』
< 397 / 469 >

この作品をシェア

pagetop