あかねいろ

愛し


大斗の前にいる人はそう言ってガハハーッと大笑いしている。


あ。


『………おっさん?』

『お?!覚えていてくれたか?イケメンは冬見ても夏見てもイケメンだなぁ♪』

『はぁ…』

大斗が声をかけられたのは…

『どうして、たこ焼き屋がお好み焼き焼いてんだよ?』

そう、夕陽と初詣に来た時に、たこ焼きを買った的屋のおじさんだった。

『お好み焼きもたこ焼きも中味は似ているからなぁ』

恰幅のいいおじさんは頭にハチマキをしてお好み焼きを焼いていた。


『しっかし何か、顔死んでるなぁー?イケメンがなんかイケてないぞ?』

そして再び大声で笑う。


絶句。


『可愛い彼女は今日一緒じゃないのか?』

『…』

地雷を踏まれた大斗はおじさんを睨み付ける。


『なぁんだぁ♪振られたのか?青春だなぁわははー』

『はぁ…』

大斗は勢いにのまれて大きくため息を吐いた。


『とりあえず、これ食ってろ。俺の奢りだ。後ビール買って来てくれ5本くらい♪』

おじさんは大斗に出来たばかりのお好み焼きと千円札を差し出した。

『…』

大斗は黙ってそれを受け取る。


千円じゃビール5本も買えねぇよ…



―――――――


『た…くちゃん…?』

〈夕陽?!どうした?家の電話…?〉

『うん…』

夕陽が思い付いて電話をかけたのは拓巳だった。


『携帯…水没しちゃって、ね…』

力無い声を聞いて拓巳は何かあったとすぐ察しがついた。

〈大斗となんかあったのか?〉

『な、なんで…わかるの…?』

〈まぁね♪俺の大事な夕陽の事だよ。それくらいわかるよ〉


優しい拓ちゃんの声…


『大斗…が居なくなっちゃった…の…グズッ』


そう言って夕陽は再び泣き出してしまった…


―――――――


『なんだよ?イケメンっ!!ビール10本も買ったのか?!』

大斗は静かに頷いた。

『まぁ座れや』

そしておじさんは神社の陰に大斗を促す。

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