あかねいろ
『さ…き、さん…?』
夏の鋭い太陽ですら、桜の輝きには負けていた。
『電話だぁれもでないし♪』
あたしの瞳の前の桃色が
真夏の空に咲いた。
満開になる。
『一時帰国♪』
そんな笑顔だった。
『咲さん?サキ、さん…咲、さん…なん、で…咲さん。会いた…かっ…た…うっうわぁぁぁああああん!!!!!』
想い焦がれ過ぎていたのか…
思い悩み過ぎていたからか…
夢か現実か
もうどっちでも良かった。
『ただいま、夕陽ちゃん。』
そして抱き締められたのは咲さんの細い腕の中。
『夕陽ちゃん…』
『うぅ゙っ…』
拓ちゃんが何でか咲さんになっていた。
信じられなかった…
ただ破壊された涙腺に滲む咲さんの顔が…
綺麗な笑顔が…
涙を抜けて入ってきて…
抱き締められた胸の温かさが…
『げ、んじつ…、、、?』
『うん、もちろん♪』
夢なんかじゃないと伝えていた。
頭を撫でられながらしゃくりあげる、あたし…
『夕陽ちゃん…落ち着いて』
『だっ…だって…大斗が居なくて…落ち、着けないのに…咲さん、が居て…信じられなくて…落ち着ける、はず…ない…よ、ゥゥッ…』
『じゃぁ…このまま聞いてね』
咲さんの柔らかくて涼しげな声は、泣き声を抜けてクリアに聞こえてくる…
だから何度も頷いた。
『拓巳から聞いたよ。大斗が家出したんでしょ?夕陽ちゃんと何があったの?』
『咲さん…じゃなきゃ…駄目、だから…迎えに行って…ください…あたし…大斗が、どこにいるか…わかんないよ…』
胸から顔が離された。
両手であたしの肩を掴んだ咲さんは大声で言った。
『大斗と何があったの?夕陽ちゃん?!!ちゃんと聞いて!!…―』
ハッとなって、咲さんの顔を見る。
咲さんは小さく笑う。
『…―そんな事より…夕陽ちゃんはどうして大斗を探しにいかないの?』
咲さんはあたしの後ろに広がる空を見るかのようにじっと強くあたしの瞳を見て言った。
射ぬかれた。