あかねいろ
咲さんは…何を言ってるんだろう…
『もう…ずっとずっと、あたしが居た頃から、大斗の中にあまりにも自然に夕陽ちゃんは入ってきてるんだよ?』
少し…寂しそうに、でも嬉しそうに咲さんは言う…
『なに…それ?』
突然何を言うの?
日本語が理解できなかった。
『夕陽ちゃんにあたしはあの時言った。大斗とあたしは1つだよ。大斗の考えてる気持ちはよくわかるの。例え離れていても…』
しっているよ…
痛いくらいわかる…
『ごめんね…夕陽ちゃん…』
頭を抱えた咲さんは顔をあげた。
『大斗は優しいから…大斗はあたしを大事にしてくれているから…大斗はあたしのために自分で自分を見ないで、自分の気持ち気付かないようにしてくれていただけ…』
大斗は優しい…
知っています。
だっていつも傍にいてくれるのは大斗だったから…
『ちゃんと向き合って…夕陽ちゃん…?』
しげさんにも、恭次くんにも拓ちゃんにも言われた言葉…
向き合う…
『向き合う…?ひろ、とに…?』
『違うでしょ?』
即答…されてしまった。
『夕陽ちゃん…夕陽ちゃんが…向き合うのは…』
そう言って、咲さんの瞳があたしを見つめる…
瞳が伝えてくるモノ…
向き合うのは…
向き合う…のは
見ないでいた自分の
本当の気持ち…?
向き合うのは…
『あたし自身…?』
『そうだよ。あたしなんて関係なくて…何にも関係なくて、夕陽ちゃんの心は、その一番大切な所で考えている想いは…何?』
咲さん…が関係なくて…
あたしの心の底は…
『あたしが居るからだなんて消せてしまう想いだったら今すぐ消して…大斗の中に入っていくのをあたしは許さないよ』
桜の花を散らしたかのように…
ふわりとしている中の…
強い瞳力に捕らわれた。
咲さんの強い強い想いは…
あたしの中に溶けていく…
『ほんとは…大斗が、大斗のこと…』
『うん』
本当はずっと気付いていたの…
自分の気持ち…
『本当は…』