あかねいろ
泣いていたらいけない…のに
でも、また涙が出てきてしまった。
あたしを見つめる咲さんの顔は、あの日見た真冬の太陽と一緒だった…
心の言葉を聞いてくれたんですね…
『ありがとう…ありがとう夕陽ちゃん…あたし、嬉しいよ』
次の瞬間、その太陽に包まれた。
再び花の香りに包まれた。
『あたし…大斗の事、好きです…だから、大事すぎるから…「恋」とは言いたく、ないって…絶対に言いたくない…って、「恋」じゃないの…そう思って、思い込ませていたの…うぅッ』
ものすごく好きなの…
いつからだったのか…ずっと…好きで、好きすぎて、
だから、臆病なあたしは、自分の想いを認められなかった。
自信がなかったから…
大事すぎて、無くせなくなってしまっていたから…
離れ離れの今の状態で矛盾だってわかっているけれど…
一緒に居るのが心地良すぎて…
変化が、恐かったから…
認めてしまったらもう溢れて止まらなくなってしまう…
咲さんはあたしを抱きしめたまま、また頷く。
『ありがとう、ありがとう』
そう繰り返す。
『でも…お前なんか知らないって、言われて…結局大斗は居なく、なっちゃた…教室で暴れて…あたしは…何もできなくて…会う約束も破って…あたしの事
、冷蔵庫とか意味不明だし…空気みたいに有るのか無いのか忘れる…とか、キスされて…あたし…もう大斗のこと…わからないよ…』
泣きまくりなら、一気に言ってしまった。
自分でも何を言ったか分からなかった。
『夕陽ちゃん…大斗にとって「冷蔵庫」ってすごい大事な物なの…アイツ、どんだけ暴れても冷蔵庫だけは破壊しなくてね、ビール冷やせなくなったら大変だって』
はっきりと咲さんは言う。
『アル中なわけじゃないけどさ、ビールなきゃ駄目なんだって、若いのに…。』
小さく笑う。
『それに「空気みたい」なんてそれくらい無いと生きていけないって事じゃない…?
なにより…それに…』