あかねいろ

「キスってきっとSEXより大事なことだから…その相手が、恋人でも好きな人でも、友達でも…アンタにとって、どんな人でもいいから…」

「…?」

「キスしたいなって大斗が思った時に、"今この人に"キスしたいなって思ったその時にしなよ…」

「何だよソレ…?」

「そうね、でもきっといつか、絶対わかるわ」

「変な咲…」

「うるさいチビ」


―――――――


うそ…


咲さんは「昔」を話してくれた。


『大斗の事だから…絶対忠実に守っている。空っぽのアイツは、あたしとか、しげさんとかの言葉は絶対守るから…』


『うそ…』


『ほんとよ。まぁそれは元々は映画の受け売りなんだけど…ね?あたしも本当にそう思うんだ』


何も…言葉が出なかった。

正に絶句。


『大事…言葉を紡ぐ所、そこから気持ちは伝わるし、そこから相手の気持ちも入ってくるの…みんな結構蔑ろにしてしまうけど、挨拶でもできるけど…でもとても大切だって思うの』


そんな事って…ある…?

あの大斗が?


『あたしは大切にできなかったから…大斗には大事にしてほしいって思った。何にも知らないアイツには…』


咲さんはそう言って、あたしの頭を優しく撫でる。


『あたしが…大斗から欲しかったたった1つのモノは…大斗からのキスだったんだよ…思わずあの時、自分でしちゃった…』


涙が頬を伝う。

気付いたらあたしも…咲さんも泣いていた。



『あたし…初めてキスされた時…まだ拓ちゃんの事で頭ん中いっぱいだったのに・・・なのに…、嫌じゃなかったんです…なんだか、ホッとしてしまって…』


その頃から…

大斗に惹かれていたのかもしれない…


『そんな前から…』


咲さんは空を見上げた。

あたしたちは太陽のキラキラに包まれた。


『あたしはね…夕陽ちゃんの事好きよ。大斗が好きな人だから、恭ちゃんも好き。あたしは大斗が好きなものはみんな好きだし、アイツはあたしが好きなものはみんな好き』

『咲…さん?』

『大斗に近づく女の子達なんて目じゃないわ。アイツには欲を満たす為でしかないから。あたし以外にもSEXするのは、あたしが促したから』
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