あかねいろ

『それは…大斗に咲さん自身を見て欲しくて…でしょ?』


なんて悲しい愛情表現なんだろう…

でもそれが咲さんの想いだったのは、あのクリスマスの日に気付いていたんだ。


『夕陽ちゃんは感性がいいね、だからつい心を赦してしまう…あたし、不思議と嫌なヤキモチは夕陽ちゃんには一切持たなかった』


大斗と咲さんは一心同体。

なんて羨ましくて…

なんて切ない関係なんだろうか…


ガチャ。


『夕陽』


屋上の扉が開くと拓ちゃんが入ってきた。

咲さんは構わず続ける。


『夕陽ちゃん…あたしに大斗が好きって言うの辛かったよね?ごめんね…本当にありがとう…』

『そんな…謝らないでください…悪い事なんて何にもないもん…』

『本当、大斗にだって夕陽ちゃんは勿体無いな。もちろん、拓巳にだって』


そう言って咲さんは拓ちゃんを見る。


咲さん…


『大斗にとってあたしは、暗闇に灯る小さな光。闇と共存しなくちゃ見えない、ぽつんと光るもの。』


咲さんは言った。

隣で拓ちゃんは何も言わず笑っていた。


『だけど大斗にとって夕陽ちゃんは、暗闇を取り払う陽の光みたいなんだよ、大斗のを闇を拭い去る力を夕陽ちゃんは持ってる』


『さき…さん…』


言葉が温かすぎて…

胸が苦しい…


『大斗の事、頼んだよ』

『あたし…あたし、咲さんの事…大好きです。これからも、ずっとずっと憧れです』

『あたしも…夕陽ちゃんに憧れてるよ♪』


咲さんは、なんて素敵な人なんだろう…


『夕陽ちゃんの思わずつられてしまうその笑顔。身を委ねてしまいたくなる温かさ、憧れる♪』


あたしは、涙を散らしながら首を振った。


『夕陽ちゃん…あのね…あたしは、大斗が居なくなる度、検討もつかないの…普段一緒に居すぎたから…』


なんて贅沢な悩み事。

あたしには大斗と咲さんの繋がりには入れないけれど、きっとそれでいいんだ。


あたしと大斗の繋がりを作れたらいい…

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