あかねいろ

『でも、今は誰より大斗が好き!!拓ちゃんとはまた違う好きなの!!』


今できる最高の笑顔を拓ちゃんに向けた。

泣きすぎで今日もきっと顔はドロドロだと思うけど…


『あたし、大斗の所に行ってくる!!』


もう踏み止まらない。


『咲さん!!バカって言われたの結構効きましたっ!!』


クリスマスの時に、あたしが思わず咲さんに言ってしまったんだよね。


『だけどね!!あたし本当に咲さんと大斗の恋物語も見てみたかったです。』


『夕陽ちゃん…』

『でも、駄目っ、ごめんなさい咲さん!!今からはあたしがその物語を紡ぎますから!!』


行かなきゃ、大斗の所に行かなくちゃ。


『いってらっしゃい夕陽ちゃん、ありがとう!!』

『いってきます!!ありがとう!!咲さん!!拓ちゃん!!またね!!』


そう言ってあたしは駆け出した。

屋上の扉を開けてその一歩を踏み出した。




その前にやることがある。


落ち着く為にトイレでメイクを直した。

酷い顔に思わず自分で笑ってしまった。


良し。大丈夫。


もう1つ、行くところ。


1年生の教室に駆け込んだ。


『菜穂ちゃん!!』


ごめんね…菜穂ちゃん。

ずっとはっきりしない態度で…


『な、なんですか?!』

『ごめんなさい』

そう言って深く頭を下げた。

みんなが見ていることも全く関係なかった。


『いきなり。やめてください、何なんですか?大斗先輩が教室で暴れたの噂になってます。夕陽先輩何したんですか?』


菜穂ちゃんは真っ直ぐ。

羨ましかったよ。


『あたしのせい。あたし、大斗の事本当は好きなの。』


菜穂ちゃんの瞳を見て言う。

『そんな事言われても困ります』


その通りだ、と思う。


『ごめん。でもあたし、大斗との間にもう誰も入れたくない、あたしのわがままだけど、伝えておきたくて』


『そんなの勝手過ぎます…』

『わかってる、だけど譲れない…ごめんなさい』

あたしはまた深く頭を下げた。


わがままでいい。

勝手でもいい。

酷いってわかっているけど、そんな事言っていられないの。


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