あかねいろ

――――――


あの時、秋の夕暮れを抜けて…


あの時、真冬に綺麗な粉雪を受けて…


あの時、春に舞う桃色の粉雪も見た…


あの時、大斗の腕の中で、夏の風を感じていたのに…



飛行機雲が通り抜けていた…あの空


いつもあるのは…あの海


あの時から、海も空も…教えてくれていたのに…

あの時から、本当は気づいていたのに…


でもきっと…好きになったのは、もっともっと、ずっと前…

いつからだったなんて、わかんないけど…



"この太陽は…咲さんの笑顔みたいだから…"

"何もかもわすれてしまう…"

あたしが勝手に咲さんの優しさに逃げていたんだ。

甘えていたんだ。


咲さんには敵わないと…

あたしの想いは叶わないと…

諦めて…



そうして、自分の想いから逃げていた。



拓ちゃんとの…大好きな人との恋から逃げた。


恋が怖くなった。




好きになっていた大斗への気持ちを認められなかった…


拓ちゃんの時みたいな辛い思いしたくない。

離れるのが嫌だった。

咲さんみたいになれない…



そんなの全て言い訳だ。





自分の弱いとこ

自分の駄目な所

認めなくちゃ意味がない。



見なくては意味がない。

目を瞑っていたらいけない。

進めない。



あの時あの海で見た真冬の太陽が、

粉雪で隠されていた、あたしの心の覆いを溶かす…


違う。


粉雪のせいにして、あたしが自ら見ないでいたのは

自分の心



だから、あたしが自分で溶かすんだ。



あたしが降らせた偽物の粉雪を…


それは…自分自身の弱さ。



溶けていく…

夏の太陽に溶かされて…





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